【導入事例】施設存続の危機から3年で常に満床へ!組織改革の象徴となった「食器」の力と、生き残りをかけた5つの再建計画|株式会社レストフローム サン・クレール

テーブルコーデ

 和歌山県でデイサービスなどの介護施設を運営する株式会社レストフローム。現在では、半径25km圏内のケアマネージャーや病院から真っ先に推薦され、入居希望をお断りせざるを得ないほどの常時満床状態が続く人気施設です。

 しかし、わずか3年前、同施設は深刻な存続の危機に直面していました。絶望的な状況から組織を劇的な回復へと導いたのは、西野事務長の「背水の陣」の覚悟と、施設運営の「当たり前」を根底から覆す数々の大改革でした。

 本記事では、西野事務長と厨房担当の寺田様のリアルな言葉を通して、改革に至った経緯と、現場の意識を根本から変えた「食器」の力について迫ります。

今回取材をさせて頂いたデイサービス「サン・クレール」

迫り来る存続の危機。背水の陣で挑んだ「5つの再建計画」

2022年の夏。新型コロナウイルスの影響は、レストフロームの現場に甚大な被害をもたらしていました。派遣スタッフが次々と来れなくなり、西野事務長と社長は50日連続で夜勤と日勤を回し続けるという過酷な状況に陥ります。

「防護服を着て汗だくになりながら、ふと事務作業をしていて気付いたんです。退職金積立金などをすべて投入しても、このままいけば数年以内にキャッシュが底をつき、確実に会社が倒産してしまうと。そこで、母が運営していたこの施設を、私にやらせてほしいと頼み込みました。」(西野事務長)

自身の貯金をすべて投資し、「1年で結果が出なければ会社を畳む」という強い覚悟を決めた西野事務長。生き残りをかけて打ち立てたのが、以下の「5つの再建計画」でした。

  • 処遇・福利厚生の抜本的な見直し(職員を大切にする環境づくり)
  • 派遣利用の停止(直接雇用への移行)
  • デイサービス内容の刷新
  • 食事の改善
  • 自前での広告展開(SNS運用)

「単に『給与をトップレベルにする』だけなら、夜勤や残業を増やして職員を酷使すれば額面は簡単に上がります。しかし、私が目指したのはそうではありません。有給消化の徹底や病気のための休暇制度の創設、資格支援制度を設けるなど、本当の意味で『職員を大切にする処遇』へと見直しました。
 当時の派遣費用は売上の約28%を占めており、経営を大きく圧迫していました。また、利用者が本当に心から楽しめるサービスを提供できているのか?という疑問も常にありました。これらをすべて根本から変える必要があったのです。1つでも欠ければ、組織の再生はあり得ませんでした。」(西野事務長)

当時の様子を語る西野事務長。

「食事はただの栄養補給ではない」ー 改革の象徴となった食器選び

5つの再建計画の中でも、西野事務長が特に強いこだわりを持っていたのが「食事の改善」でした。

「デイサービスに来る理由は、介護が必要だからです。しかし、だからといって病院食のような食事で満足できるでしょうか? 健康な時には美味しい外食を楽しんでいた方々が、介護施設に来た途端にプラスチックの器で味気ない食事を強いられる。食事は単なる『栄養補給』ではありません。本来のサービス業として、それは絶対に変えなければならない『当たり前』でした。」(西野事務長)

温かい食事をレストランのように提供するため、再加熱機器の導入と厨房の大規模なリフォームを決断。しかし、そこで大きな壁にぶつかります。再加熱機器に対応する食器を探すと、当時はプラスチック製のものばかりだったのです。

「いくら中身を美味しくしても、器がプラスチックでは結局病院食と同じになってしまいます。どうしても陶器や磁器を使いたかった。展示会を歩き回り、どこに行っても『陶器は割れるからスチーム機では絶対無理だ』と断られました。そんな中、唯一『使えますよ』と言ってくれたのが、三和厨房の食器レンタルサービス『テーブルコーデ』だったんです。」(西野事務長)

割れにくい工夫を施した磁器食器 。西野事務長はこの出会いに運命を感じ、「この食器を導入する日から1年間、死に物狂いでやってやろう」と決意を固めました。

現場の猛反発。そして、器が変えた利用者の笑顔

しかし、長年「効率重視」で回ってきた現場に、あえて手間の掛かる新しい食器を導入することは、容易なことではありませんでした。厨房を担当する寺田様は、当時の現場の混乱と本音をこう振り返ります。

「正直なところ、最初は不満だらけでした。それまで長年同じやり方でやってきたのに、急に『食器を変える』『温かい食事を手作りで提供する』と言われたんです。『重たいし割れるのに、なぜ磁器食器なのか』『なんで私たちが一から盛り付けをやらなきゃいけないの?』と、現場からは不満が噴出しました。」(厨房担当・寺田様)

メラミン食器から磁器への変更は、現場にとって「重さ」と「割れやすさ」という大きな負担に感じられました。効率を求めるスタッフとの間で衝突が絶えない日々が続きました。

「毎日私に文句が来ましたよ(笑)。でも、『とにかく実行する』という姿勢は崩しませんでした。なぜこの品質が必要なのか、なぜこの器でなければならないのか。単なる栄養補給ではなく『食事を楽しんでいただくため』という理屈を、根気強く説明し続けました。」(西野事務長)

半年間続く反発に耐えながら導入を進めると、少しずつ、しかし確実にある「変化」が起き始めました。

「実際に提供を始めてみると、利用者様の反応が今までと全然違ったんです。『きれいね』『嬉しい』『ちゃんとした食器で食べている感じがする』と、笑顔が溢れました。残食も減り、味への否定的な意見はほとんどなくなりました。 ヒビなどの破損を見つけても、『テーブルコーデ』のレンタルなら無償で予備品を補充してもらえるので、破損に対するプレッシャーも徐々に減っていきました。今では、きれいな器に盛り付けること自体に、私たち現場がやりがいと喜びを感じています。」(厨房担当・寺田様)

「最初は割れる・重いと不安でしたが、今ではご利用者様が喜んで食べていただいているので、やりがいを感じています」と語る寺田さん。
レンタル食器を使ったお食事。味にこだわり、施設には高級炊飯器も設置

食器の変更が起爆剤となり、連鎖する「組織の進化」

「テーブルコーデ」の導入による食器の刷新は、単なる食事改善にとどまらず、レストフロームの組織全体を変える大きな起爆剤となりました。

「食器が変わったことで、『この施設は本気で変わるんだ』というメッセージが職員や利用者様に明確に伝わりました。目に見える変化があったからこそ、組織が変わるという認識が浸透したのだと思います。食器の変更は、まさに決意表明でした。」(西野事務長)

食器改革の成功を皮切りに、西野事務長は次々と新しい取り組みを形にしていきました。まずは「派遣依存からの脱却」。DX投資を行い、タブレット入力を導入。言語の壁を越えて業務ができる仕組みを整え、ミャンマーからの直接雇用に踏み切ることで、長年の課題だった派遣依存を完全に断ち切りました。 

「外国人材の採用にあたっても、彼らを労働力としてではなく『人』として大切に扱う業者を自分の足で探し抜きました。現地の情勢悪化で来日が危ぶまれた時も、『ここで内定を取り消せば、若者の希望を奪うことになる』と信じて待ち続けました。彼らが無事に定着し、戦力となってくれたことで、長年の課題だった派遣依存を完全に断ち切ることができたのです。」(西野事務長)

さらに、デイサービスの内容も刷新しました。本格的なカフェマシンを導入し、西野事務長自らが和歌山から始発で大阪のラテアート教室に通い詰め、技術を習得しました。

「職員に新しい挑戦を求める前に、まず自分が学ぶ姿勢を見せなければ人はついてきません。私がラテアートを学んで実践し始めたことで、職員たちも『自分たちも変わらなきゃ』と思ってくれたようです。」(西野事務長)

デロンギの本格的なカフェマシン
西野様が自らラテアートを提供してくださいました。
西野様が淹れてくださったコーヒー。絶品でした。
施設職員の方も自宅で練習を重ね、スキルアップにつながっているそう。

さらなる挑戦へ:他施設にはない「施設内通貨」と「QRコード活動記録」

食器改革から始まった組織全体の進化は今、他の介護施設では類を見ない独自の先進的な挑戦へと繋がっています。

その一つが、施設内通貨「クレール」の導入です。利用者が運動やレクリエーションに参加することでポイント(クレール)を付与し、それを本格カフェメニューなどと交換できる仕組みを作りました。

「ただ漫然と過ごすのではなく、行動することで報酬が得られるという『新しい体験』を創出し、利用者様のモチベーションを高めることが目的です。さらに、月間で獲得したクレールを集計し、カフェメニューなどと交換できるようにしました 。これにより、見えにくかった介護現場の活動が可視化され、ご家族とのコミュニケーションも深まりました。」(西野事務長)

利用者様が何をしたのか記録ができるQRコード読み取りシステム。ご家族でディズニーランドに行った際に思いついたそう。
新しく運用を開始した施設内貨幣「クレール」

さらに、「QRコードによる業務効率化とデータ連携」も進めています。利用者名のQRコードと、活動内容(例:「前髪カット」「カラオケ」など)のQRコードを二段スキャンするだけで、「誰が何をしたか」が自動で記録される仕組みを自社で構築しました。

「手作業の記録負担が劇的に減り、外国人職員でも簡単に扱えます。将来的には、このポイント記録を銀行通帳そっくりの手帳にしてお渡しする『通帳化』も計画しています。活動を『収入』、サービス利用を『支出』として記録すれば、日々の行動が目に見えて分かり、より一層のモチベーションアップに繋がると考えています。食器改革から始まった『やれることを全部やろう』という風土が、こうした新しいアイデアを次々と形にしています。」(西野事務長)

デイサービスで提供しているカフェサービスのメニュー。まるでお店のような作り込み。

見栄えではなく「中身」への投資が生き残る道

倒産の危機から3年が経過した2026年7月。レストフロームは当初掲げた「給与のトップレベル化」を含む5つの再建計画をすべて達成し、常時満床という劇的な回復を遂げました。

「ここ1年ほどは、『施設が嫌で退去する』という事例がなくなりました。施設での素晴らしい体験がご家族にも伝わり、安心して長期利用を決めてくださる方が増えています。SNSの運用も、今では職員が自主的に月4回更新してくれています。かつては私に反発していた職員たちの中に、『この施設で働く誇り』が芽生えたことが何より嬉しいですね。」(西野事務長)

激動の3年間、現場からの猛反発に遭いながらも、西野事務長がブレずに貫いたのは「人を一番に考える」という姿勢でした。今では、職員との間に他には代えがたい強固な信頼関係が築かれています。

「職員から『ここでずっと働く気だから、絶対に施設を潰さないでね』と言われます。もし会社を畳んだり、M&Aで私がトップから退くようなことがあれば、『その時は早めに言ってね。それまでは絶対にここで働き続けるから』と。そんな風に言ってくれる彼らがいるからこそ、頑張れるんです。」(西野事務長)

西野事務長は、これからの介護業界を生き抜くための哲学をこう語ります。

「外見の綺麗さや表面的な見栄えにお金を使うのではなく、内部の質や『人材』に資金を投入すること。職員への資格取得支援(全額負担)や働きやすい環境づくりなど、見えない部分に投資し続けることが、結局は他社との差別化に繋がり、生き残る道になるのだと確信しています。人が一番の資産です。」(西野事務長)

おわりに

「我慢の上に成り立つ介護」という業界の当たり前を打ち破り、利用者の本当の喜びを追求し続けるレストフローム。その大改革の第一歩は、効率重視のプラスチック食器を手放し、あえて手間のかかる「本物の食器」を選ぶという決断から始まりました。

食器を変え、食事を変え、そして職員の意識を変えた『テーブルコーデ』との出会いは、同施設のV字回復を支える強固な土台となっています。これからもレストフロームは、職員と利用者の双方にとって「地域で真っ先に選ばれる施設」であり続けるでしょう。

【取材協力】
サン・クレール 様
和歌山県 / デイサービス
事務長 西野 文彰 様
気軽に、自由に暮らしを楽しめるアミューズメント型デイ・サービス
運動機能の低下や認知症予防に特化した施設で、単なるデイサービスの枠を超えて、ゲームなどのアミューズメント設備を取り入れたり、運動スペースやカフェスペース、談笑スペースなどを設け、地域の方々がおだやかなひと時を過ごせる空間です。